全くの初心者さんであるカナダ在住知人のNさんが、拙作「金継ぎ上達レッスン」を見ながら独りで金継ぎに挑戦。
その際に出てきた素朴な疑問のいくつかをメールで頂き、お答えしました。きっと多くの方の参考になると思うので許可を得て公開します。
◯質問その1
本にある、一番最初の小さな欠けの繕いは仕上げに金の丸粉を使っていますが、これを金の消粉でするには、次の外焼締ボウルの銀消粉の要領でやればいいですか?
つまり、ツヤのある釉薬がかかった器の小さな欠けの繕いの方法で、最後は金の消粉仕上げにする場合。
答え
イエス。その通りです。
◯質問その2
錆付を1回で終わらせるのは無理?これは単なる疑問なのですが、慣れたらそれが可能で、時短になるのかな?と思って。
答え
これは残念ながらNGです。
表面だけが固まって中はブヨブヨ状態になり、そうなると何日経っても固まりません。
急がば回れ。薄く付けてしっかり固めてから重ね付けした方が、断然早く仕上がります。
錆が上手に作れれば1日でしっかりカリッと固まるので、翌日に作業できます。
◯質問その3
直したい器がいくつもある時(この場合小さな欠けの繕い=皆同じ作業)、例えば5個あった場合、5個いっぺんに作業をする、というのでもOK?
答え
イエス。私は20個とか一気に錆付けしてます。
◯質問その4
キムワイプは、ペーパータオル(キッチンペーパー)でも良い?
答え
キッチンペーパーというより、ティッシュペーパーで大丈夫。
クリネックスのティッシュが一番毛羽立たないって言われてて、
でも毛羽だって白い粉がついちゃうようだったら、キッチンペーパーの方がいいのかも。
あと、着古したTシャツを小さく切っておくと便利です。
◯その5
錆漆、余ったのは2,3日中に使い切る、と本にありますが、使い切れなかった場合は?
答え
時間が経てば経つほど固まりにくくなっていくので、理想は都度作るのが一番。
作りたての錆は、すぐに固まってくれるので。
でも、実は冷蔵庫で一週間くらいは持ちます。
その際は、色が黒くなったり硬くなったところは使わず、内側の柔らかくてフレッシュな部分のみ使うこと。
ごく少量の錆漆の作り方を後日教えます。
◯その6
砥草の裏表はどちらを使うのでしょう?
あと、どのくらい使えるものなの?
答え
表面のギザギザした方を使います。
ギザギザがだんだんなくなっていくので、そうなったら使えないです。
カッターナイフでほぼ成形して、仕上げにトクサを使う感じがいいです。(トクサで形を作るのは大変ということ)
乾燥したトクサは、一本取り出して水に10分くらい浸してから使う。
この形のまま、表側がヤスリになってます。
◯その7
紙の上で金を蒔く作業をした後、金消粉を回収しようと思っていたのに出来なくて、もったいなかったです。
答え
つるつるに加工した紙でやれば、回収できます。
カレンダーとかポスター、高級な紙袋のつるつるしてるものを使おう。
黒があれば最強です。
私は東急ハンズで黒いツルツルした厚紙を買って使ってます。
◯その8
周りについた金粉はどうやって拭き取ればいい?
答え
先ずはそのまま一日放置して、そのあと室(ムロ)に二、三日ほど入れる。
そしたら、一度水洗いしてみて。
メラニンスポンジで金粉を蒔いたところ以外を軽くこするのも良いです。
◯この9
絵漆を美吉野紙で絞って漉す、というのも難しかったです。量が少なすぎた。多く絞ったらラップに包んでとっておいてもいいの?
答え
イエス。
私はあらかじめラップの上にこした漆を落としてます。
塗る範囲がごく僅かのときは、ガラス板の上に絵漆を少量落として、小さく切った美吉野紙を漆の上にかぶせて、滲む漆を小さな金属のヘラやナイフでしごくようにすくい取って漉してます。
厳寒のカナダで、よく一人で頑張りました!
本を見ただけでここまで出来たんだから、大成功だと思います。
後日、日本に一時帰国した際、仕上げをやり直しました。
その写真は追ってアップしますね。